人が育つ組織 5つの原則

昔から経営資源とは「ヒト·モノ·カネ」といいます。その中でも特に人に関してはいつの時代も多くの経営者の方が悩みを抱えているポイントではないでしょうか。私はこれまで社会人としてのキャリアを社会保険労務士という人事労務の専門家として歩んできました。そして、そのキャリアの中で多くの経営者様からご相談をうけてきました。採用、人事評価、給与制度、育成、離職、労使間のトラブル、、色々な問題解決の支援をさせていただきました。

その過程で発展する会社と衰退していく会社というもの数多く見てきました。そして、業種、規模に関係なく発展していく会社の共通点というものを見つけました。それが、「人(社員)が成長している」ということでした。「企業は人なり」といいますが、会社の成長は人(社員)の成長とイコールであるということです。そこで、私は自分のキャリアを通して「人が育つ組織」を5つの原則にまとめました。それが、「人が育つ組織5つの原則」です。

経営理念の明確化

経営理念という言葉は、人事労務の分野においてよく使う言葉ではあるのですが、人によって解釈が違ったりします。経営理念という言葉を辞書で引いてみると次のように記載があります。「企業の活動方針の基礎となる基本的な考え方」。つまり、企業活動の基礎でありあらゆる活動の判断基準であるということです。

多くの場合、経営理念とは創業者が会社の創業に託した想いのことであり、会社の不変の価値観と会社の存在理由·目的からなります。会社としてのあるべき姿を示し、長期的な目標を設定します。つまり、経営理念を明確化することによって会社の将来の方向性が決まるので、その結果、どういう人材を採用するのか?という採用の基準も見えてくるのです。人の成長ということを考えるときは、そもそもどういう人を採用するのか?という入口管理がとても重要です。したがって、「人が育つ組織」は経営理念が明確になっています。

ちなみに、経営の神様とよばれた松下幸之助氏は、事業活動の成功について次のように述べています。「事業は、経営理念が確立されたら50%の成功、人の能力を活かす環境が整備できたら80%の成功、効果的な戦略·戦術で100%」。つまり事業活動が成功するかしないかは、やはり経営理念の明確化がとても重要ということです。

育成理念の明確化

育成理念とは、会社や組織において人材を育成する上で拠りどころとなる価値観のことです。繰り返しになりますが、「企業は人なり」ということがあるように、その会社の発展は、そこで働く一人一人の社員さんの成長と相関関係にあります。

だいぶ古い話になってしまい恐縮ですが、日本を代表するプロ野球選手であった川上哲治氏は、巨人軍V9を成し遂げたときの監督だったのですが、野球指導者でありながら人間教育に力を入れていたということで有名です。巨人軍全盛期の時のチームミーティングでも「人生とは?」「仕事とは?」といような話をされていたそうです。また、選手育成については、「選手を終わってからの人生の方が長い。野球人としてのキャリアが終わり、どこに行っても「さすがは元ジャイアンツの選手だ」と言われるように選手を育成していた」とのことです。この言葉に川上監督の育成理念を読み取ることができます。つまり、このような人間教育という育成理念をもつ川上監督のもとで、王選手、長嶋選手という歴史に名を刻むプロ野球選手が育ちV9という偉業が成し遂げられたわけです。

つまり、人が育つ組織はこの育成理念が明確になっています。育成理念も無く社員さんを売上を上げるための駒(パーツ)のように考えている組織ではなかなか人は育ちません。事業活動を通して、社員さんを一人の人間としてどのように成長させていきたのか?いうことに一貫性を持つことが大事になります、そして、その一貫性を貫くための土台が育成理念です。

責任意識の醸成

責任意識とは、「自分の役割を全うする意識」です。人が育つ組織は、2つの責任意識が醸成されています。それが、「育てる責任意識」と「育つ責任意識」です。「育てる責任意識」は会社、もしくは各部署、チームの上司がもつ責任意識で、「育つ責任意識」は、会社、各部署やチームで働く社員さんが持つ責任意識です。これまでたくさんの経営者様から「なかなか社員が育たないんだよ」というご相談をうけてきました。この場合、多くのケースで会社や上司は「育てる責任意識」を強く持っていることが多かったです。しかし、社員が育たない。その原因はもちろん育成スキル(マネジメントスキル)も大きな要素としてありますが、実はその対象となっている社員さんが「育つ責任意識」を持っていない場合がとても多かったです。とても大雑把な表現になってしまいますが、「育つ責任意識」を持っている社員は、少し放っておいてもどんどん成長します。つまり、この「育つ責任意識」がどれだけ社員さんに醸成されているか?重要となります。

人事労務管理の適正化

人事労務管理は多岐に渡ります。勤怠管理、労働時間管理、年次有給休暇管理、給与計算、人事評価、人事考課、就業規則等の各種規定類、福利厚生制度等。特に昨今では「働き方改革」という言葉に代表されるように、これまであまり問題視されてこなかった長時間労働、セクハラ、パワハラ等の様々なハラスメントが問題になっております。そして、これらの多くが労働基準法等の各種法律に沿った運用をしていなかくてはならないことになります。

一例をあげると、特に最近は適正な労働時間管理が求められ、その適正な労働時間管理に基づいた給与計算が大切になります。そして、その給与計算には、毎年料率が変わる社会保険料等も関係してきます。これだけでも限られた資源の中で事業を営んでいる会社様は対応が大変になります。これらに対応しきれていない状況が、社員さんにモチベーションを下げる要因になってしったりします。仕事に対するモチベーションが上がらない中では、なかなか人は成長しません。したがって、法令にそった適正な人事労務管理を整えることが大切になります。そうすれば、社員さんは安心して働くことができるようになります。つまり、人事労務管理の適正化は人が成長する組織の土台となるものです。

⑤暖かい組織風土

ここでいう組織風土とは「人間関係」です。人が育つには、その組織の人間関係がとても重要な要素となります。その人間関係とは「暖かい人間関係」です。最近の人材教育の世界でトレンドとなっている言葉で表現すると「心理的安全性」という言葉があてはまります。心理的安全性とは、恐れや不安を感じることなく、安心して発言·行動できる状態のことです。この「心理的安全性」という言葉は、グーグル社のリサーチで有名になりましたが、現在、多くの会社で組織創りのキーワードとして使われています。

なぜ、人が育つ組織を創るうえでこの暖かい組織風土が大事かというと、人は違うからです。人は育ってきた環境も違いますし、考え方も価値観も違います。そういった人達が集まったのが組織です。つまり、同じ環境下で同じ仕事をしていても、人それぞれ考えていることや感じていることが違いますし、成長のスピードも違います。したがって、会社としてはその違いを認識し、お互いに認め合い、足りないことは補い合っていくこと組織風土がとても大事になります。